語りの部屋

2023.3.25

新潟県妙高市立新井小学校の先生の論文

2021年にZOOMでお話しをさせていただいた新潟県妙高市立新井中学校の大島先生から、教育実践研究の論文に当時のオンライン授業のことを掲載されたとご連絡がありました。

論文では「DX」を活用した学びについての研究結果が示されていました。

オンラインを使って様々な方のお話を聞き、平和学習を行っていらっしゃいました。

動画を見るという一方通行の形ではなく、質問など双方向のやり取りができるオンラインツールは、遠方にいる被爆者とのやり取りも容易で、今後の平和活動の普及にも繋がると感じました。

私のお話がオンラインによって他県の方に伝わり、さらに論文という形でまた更にいろいろな方に伝わっていくことを嬉しく思います。

 

論文の一部をご紹介いたします。

 

【授業DXで実現する中学校の個別最適な学びと探求学習の研究 ー社会科における平和学習の実践を通してー】

(前略)

以下は、折り鶴プロジェクトにおける生徒の振り返りの主な感想である。

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生徒A:川野さんの経験したお話しを聞いて、自分の大切な友達も被爆で亡くなってしまうことがあると思うと戦争の怖さも悲しさも、一番近くで感じることになるんだなあと思いました。6年竹組の団結力はすごいなあと思いました。みんな思いやりがあって優しくて、そんなクラスになりたいです。

 

生徒B:今までは戦争の恐ろしさだけなどが多かったけれど、今回は大事な人が失われるということを学びました。爆撃の被害が少しだけでもこういう後遺症が恐ろしいことがわかりました。自分も友達が亡くなったら辛いだけじゃないと思います。それを私たちにお話ししてくださり感謝しかありません。

 

生徒C:悲しい話だったけど、すごく身近に感じられたし、話をきいて分かったこととか、経験の話を聞くと自分のためになるなあと思いました。自分たちがこんな感じになるのは、こわいし、いやだなと思いました。戦争ってほんとうに怖いことなんだなと思いました。今、私たちが生きているのは、奇跡だし、命がとても大切だと改めて思いました。

 

生徒D:戦争のころを振り返って、本物の幸せとは何だと思いますか。後悔したことはありますか。禎ちゃんが今生きていたら、何と伝えたいですか。

 

生徒E:仲間を大切にする気持ちを行動に移すことができるのはとても凄いと思った。今もこのことを世界中の人に伝えたいけれど、嫌な思い出を思い出すのは辛い。とても複雑な気持ちだけれど、語り部として、私たちに話をしてもらってとても、ありがたかったです。原爆の被害でたくさんの人々が、今でも大変な思いをしていることを実感して、新潟県だけれど、その人たちの分まで、生きようと思いました。おおばあちゃんにも小さい頃教えてもらったので、覚えていたいと思った。

 

生徒F:私は川野さんの話を聞いて、禎子さんの慰霊碑のために、3年間で5,400万円の寄付が集まったのがすごいと思いました。戦争によって辛いことがあった人が沢山いる中で、私たちのような平和な時代に生まれて生活できていることは、本当に幸せだと思う。これからもどんな小さなことでも他の国と争ってはいけないと思いました。中学に入って、これまで、沢山の方がリモートで授業をしてくださったのがうれしい。

 

生徒G:いろいろな知らない未知の歴史について知れたので、ほんとうによかった。そして、楽しかった。これからの学習に生かしたいです。

 

生徒H:「さだちゃん」という人の気持ちを「無駄」にしないというみんなの気持ちが一つになったからこそできたことで、すごいことだと思った。像ができたときは、どんな気持ちだったかくわしく聞きたい。

 

生徒I:改めて、命のありがたさ、尊さを考えることができました。また、川野登美子さんは小さいときに、親友の禎ちゃんを亡くしたからこそ、命のありがたさを知っているんだなと思いました。そして、川野さんは、こうした語り部の仕事をしているから戦争の怖さを面と向かって私たちが勉強できているんだなと感じました。だから、この語り部の話に応えて、私たちはいろいろな人に、このことを伝えていかないといけないな と思いました。また、私は何か一つ欲しいものをがまんして、広島や長崎のために募金しようかなと思いました。

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上記の生徒の振り返りから、一方向ではなく、講師が各小グループの話し合いの輪に共に参加し、双方型交流を通して生徒と考えを共有することができていたことがわかる。そして、その話し合いの交流を通して、多角的な話し合いを進めていることもわかる。

 

Aの生徒の近隣では、友情についての議論になっている。

Bの生徒は、戦争のことを体感的に知ることができ、感謝している。

Cの生徒は、戦争が自分の身近なものとなり、より理解を深めていることがうかがえる。

Dの生徒は、被爆者に対して、本当の幸せについて聞き、生きる意味を知ろうとする主体的な態度を身に付けようとしていることがわかる。

Eの生徒は、戦争体験者への気遣いや寄り添う態度を持ち、その時代の方々への
敬意や感謝を抱いている。

FやGの生徒のように、うれしく、楽しいことが学習意欲を高め、次の学習に生かしていきたいという積極的に学ぼうとする態度がわかる。

Hの生徒は、感動からの次の新たな質問や疑問が生まれている。

そして、Iの生徒は、学んだことを基に、よき行動に移そうとする主体的な態度を身に付けようとしている。

 

戦争という遠いものが、自分の身近なものになって、この課題をどう解決しようか戸惑いながらも話し合いを進めている様子が理解できる。戸惑いがあるから、対話や会話が始まる。

このように、授業DXは、思考の個別化や多角化を進展させて一人一人の生徒に、最適な学びを提供することに資する。そして、生徒の中には、今後どんな力を高めたいか考えている生徒や、さらに知りたいことを見つけている生徒がいる。自分の資質・能力を高めようとしている意識の表れではないか。
また、デジタルノートにまとめる際に、調べ方やまとめ方など学習に目を向けて自分に合ったやり方を見つけられた生徒もいた。教師が教える授業から生徒が自ら学びとる授業DXの可能性を生徒自身が実感できていたことが分かる。

 

 

以上のように先生がまとめられていました。